襖、障子、に使う糊のお話

襖のシミは糊焼けが原因が8割!

襖のシミが目立つようになると気になりますよね 原因はいくつかあるのですが

  • 戸を開けておいた事で雨が当たりシミが出来る
  • 飲み物がしらないうちに飛散してシミになる
  • 同じ所を素手で触りすぎて手垢がつく
  • 建具の木材の灰汁が染み出てくる
  • 貼り付けした時の糊が紫外線で焼けて変色したシミ 一般的に糊焼けといいます

主にこんな所なのですが一番多い原因は紫外線による糊の変色 糊焼けです
下の画像を見て下さい

枠にそって変色してますよね? これは枠の近くだけ濃い糊を塗るため 糊焼けの度合が大きくなってシミとして目立ってます、また下の画像を見て下さい

襖の中央部なんですがこれも糊焼けです 中央部にも糊をつける貼り方をする為に枠の周り以外にもこのようなシミが出来ます、下地の木材の灰汁と思ってる人も多いのですが違います、 もしお宅の襖にシミが出来ていて、近々張り替える予定ならその部分を切り取って裏を見てみて下さい おそらく裏は何ともなく表だけシミになっていると思います 裏がなんともないという事は下地の灰汁のせいでは無いという事です

ではなぜこのような糊焼けが起きるのでしょうか? それは糊の種類によります
簡単にいうと安い糊は糊焼けする成分が入っているのです では詳しく説明しますね

デンプン糊の製造法には大別して2種類ある!

襖、障子には昔からデンプン粉を使用したデンプン糊が使われてきました
凄く簡単にいうと小麦粉やお米を煮詰めて糊にしていたのです
小麦粉のグルテ質だけを使った生麩粉を使用した生麩糊は掛け軸や和紙の文化財の裏打ちなどに使われる最高級な糊です
グルテンだけを抽出して生麩粉を使う為、たんぱく質がなくカビの発生も抑えられ素材を痛めず糊の変色もないのが特徴です



昔からの製法を守っている作り方を煮糊法といいます
煮糊法はデンプン糊だけを煮込んで柔らかくしてトロトロにして作ります 家庭でも作れるのですがやってみると手間がかなり掛かります 出来上がった糊は自然なとろみと粘度、そしてデンプン糊だけゆえに紙素材の悪影響のない優雅な糊になるのです  デンプン粉だけが原料なので糊焼けもありません

ちなみに木や紙の主成分であるセルロースとデンプンの化学式はとても似ていて同じ特性を持っているそうです、なので気温による膨張収縮率も似通っているので紙、木との接着糊としての相性もよいのです  膨張収縮率が違うと高温低温下では糊と紙がずれてしまいのちのちの剥がれの原因にもなります 両面テープで貼った障子がはがれやすいのはこの為です

さて煮込むタイプとは別に冷糊法という作り方もあります
これはデンプン粉に苛性ソーダのような薬品をいれて混ぜる方法です、苛性ソーダには熱を発し、さまざまなモノを溶かす作用があるため、熱を加えることなく混ぜるだけで糊が出来るのです、つまり煮込まないで糊状態になるのです
簡単に作れる為に安価に製造できるのですが苛性ソーダは強アルカリ性の為、酸性の物質で中和させる必要がありその過程で塩が糊の中に残るのと化学物質が完全になくなりません それが紫外線で変色して糊焼けが発生するのです
まとめると

  • 煮糊法で作るとデンプン粉だけを煮詰めて作るので和紙等の素材に優しく糊焼けの出ない糊になる ただ手間が掛かるので価格は比較的高価になります
  • 冷糊法で作ると化学物質で熱を発生させる事で混ざ合わせるだけで糊が出来るので手間が掛からず安価ではあるが化学物質が残っている為 紫外線による変色が目立つようになる、つまり糊焼けしやすい

という事なのです

ホームセンターで売っている障子、襖糊はほとんど冷糊法で作った糊です  ただし書きを見ると日の光のあたる場所の襖には使用しないで下さいとか記述されてる事もあります、またツンとした匂いがするのは薬品が残っている為です

皆さんが自宅の障子、襖を自分で張り替える時には糊の品質までこだわる必要はないとは思いますのでホームセンターで売っているもので良いのですが、最近はプロの業者さんでも安いという理由で糊焼けする糊を使っている所もあります また酷い所はデンプン糊ですらなく科学糊(木工ボンドや壁紙糊)を使っている所もありますので注意が必要です

プロに頼む時はどんな糊を使っているか確認しましょう!

正直な話 煮糊は安くないです  値段だけでいうと糊焼けの心配のある冷糊法の襖糊のほうが半額に近いくらいです
ですが仕上がりはまったく違います、また紙に悪影響を及ぼさないという点で美しさが長持ちするのです

最近はプロでも冷糊製造の安価な糊を使う所も増えてます、また酷い所は木工ボンドや壁紙糊を使う所もあります
知識が無い場合もあるようですがあえて糊焼けする糊を使って張り替えサイクルを早めるという業者もあるようです
そういった業者は襖紙の強度を増す為の伝統的な貼り方(襖はただ単に紙を貼るだけではないのです)を省く簡単な貼り方をする傾向があります
ですのでどんな糊を使っているかを確認する事でその業者の技術に対する姿勢を判断できると思います

手前みそになりますが当方ではこの糊を使っています

いうまでもなく煮糊製法で作っているので糊焼けはありません、また あく止め成分も入っているのでより安全な糊です
さらに高級な糊で生麩糊もあるのですが家庭用の襖、障子ならこの糊が最上級といってよいでしょう